五月雨を集めて速しだまらっしゃい

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ファイトクラブ考察 その②

続きです
中編と思っていただければ
 ここからはタイラーと「僕」の関係性について掘り下げていく。
既に述べたようにタイラーは「僕」とは正反対の男である(ただ、育った家庭環境だけは出来過ぎている程に共通しているが)。特にその違いは暮らしぶりに顕著に表れている。定職には就かず、バイトと石鹸の製造・販売で生計を立ててはいるが、稼ぎのほとんどは“計画”の資金に当てられるため、残るのは雀の涙程だろう。しかし彼にとってはそれで一向にかまわない。何故なら彼は高級ブランドには興味がないし、映画・テレビ・音楽etc…あらゆるエンターテイメント(特に流行りの!)にも興味がない。そもそも住居だって廃屋に住み着いているだけなのだ。彼には生きていけるだけの必要最低限があれば充分なのである。それはつまり、あらゆるモノに頼って個性を演出せずとも、自分の存在だけで自分を肯定できるということを意味している。
反対に彼は余剰・過剰を嫌う。現に彼が“テロ”を行う場は高級ホテルや映画館など、余剰の象徴とも言える場である。石鹸の主な買い手もセレブな女性達である(石鹸の主な原材料は――恐らくはそうした女性達が利用する――痩身グッズから盗んだ脂肪である!)。

「物質至上主義」の社会において、「モノに支配されない」彼の生き方は、いわば「僕」のこれまでの人生を完全に否定するものだ。しかし「僕」は、父親におしつけられたそれを否定することをこそ求めていたのだから、彼に魅かれるのは当然と言っていいだろう。

 
 さてタイラーと「僕」は飛行機で出会い、次第に親交を深めてゆくというのは既に記述した通りだが、同居生活を始めるにあたり、ある奇妙な儀式が行われる。タイラーが「僕」に殴り合いを申し出るのだ。この行為の目的が憂さ晴らしなどでは無いことは、彼がまず殴らせろではなく、「力一杯、殴ってくれ」と始めることから理解できる。苦痛を与えることではなく、味わうことが優先されている点を見逃してはならない。当然「僕」は拒否する。なにせ苦痛から逃げる為に薬に頼るぐらいなのだから。だが結局はタイラーの推しに負け、已む無く申し出を受け入れる。
 人生で初めて殴り合いは、苦痛と同時に彼に高揚感を与えた。アドレナリンの分泌ではなく(それもあるかもしれないが)、精神的な空虚が満たされたことによるものだ。こうして「僕」は子供に戻ったように、タイラーと無邪気に痛みを与えあう。いや、受け取り合うと言うべきか。
 この“奇妙な光景”は次第に人を引き寄せ、見学するだけでは飽き足らず、一緒になって殴り合う者も現れ始める。次第にその数は増え始め、遂には酒場の地下室を拠点とした小さな団体が結成される。これが表題にもなっている「ファイト・クラブ」である。
 
 このクラブの目的は勝ち負けを争うことではない。誰が強いかを決めることでもない。「僕」と同じように、「すべてがもうろうと――遠くかすんで――コピーのコピーのコピーのよう」な生活の中に、生きているという実感ももたらすこと、それが目的である。あらゆることが他人事のような(あるいはそう思ってしまいたい)のような人生でも、受けた痛みだけは圧倒的なリアリティを持っているわけだ。さらに言えば、その痛みを受け取れる肉体があるということは、逆説的なようだが生きているという証明に他ならない。彼らはそれを求めて夜毎ファイトを繰り返している。事の発端、「僕」とタイラーが初めて殴り合った時に感じた高揚も、それに由来するものである。
 もっとも、「僕」を満たした要因はそれだけではなく、タイラーがクラブをつくった目的もそれだけではなかったのだが……。


 はじめは自己完結型だったクラブも、次第に外へ向かい活動を広げていく。狭い地下室で蓄えられた攻撃性を、一気に爆発させるように。タイラーに鼓舞され、彼らは文化の象徴へ次々攻撃を仕掛ける。受信アンテナを破壊し、レンタルビデオショップのテープを狂わせる。高級車をパンクさせ、汚染し、ディスプレイのパソコンを爆破etc…
 タイラーは言う。

「この世で1番強くて頭の良い連中、だが可能性の目がむしり取られている。ほとんどの人間がガソリンスタンドの店員か、ウエイターだ。もしくは会社の奴隷。広告を見ちゃ車や服が欲しくなる。嫌な仕事をして、要りもしない車や服を買わされるわけだ。俺たちは歴史のはざまで生まれ、生きる目標も場所もない。新たな世界大戦も大恐慌もない。今あるのは魂の戦争。毎日の生活が大恐慌。テレビにこうそそのかされる、いつか自分は金持ちかスーパースターかロックスターだって。だが違う。少しずつ現実を知り、とうとう頭がキレた!」


「職業がなんだ?財産がなんて関係無い。車も関係ない。財布の中身もそのクソッタレなブランドも関係無い。」


今や彼らは何かに頼らずとも自己の存在を肯定できる。車も服も肩書きも財産すら不要だ。自分の肉体ひとつだけで充分だと、それだけが確かなものだと知ったのだから。だから彼らは攻撃する。虚構の自己を植え付けようとするものを。そしてそれを推進する、言い換えればありのままで生きることを許さない社会に「否」を叩きつけたのだ。遂には危険なテロ組織として警察にマークされるのだが、警察署長にすら襲撃を仕掛け、破壊活動を黙認させてしまう。
 
こうした様相はカルト教団にも酷似している。もっとも本人達にその自覚は無いが。一歩引けば、映画を観賞している人間ですら、それに気付かないかもしれない。あるいは彼らの行動には納得しうるだけの理由があるので、(少なくとも)他のカルトとは違うのだ、と(ただ多くのカルト信者も往々にしてそう考えているわけだが)。しかしこれが意味するのは、タイラーの掲げた教義がそれだけ人を惹きつけるのに有効であったということだけである。他のカルト教祖がそうであるように、タイラーの言動にも正当性はない。教祖だけが事実を知っているという点も、また同様である。違う所を挙げるとすれば、金銭を目的にしていないという点ぐらいであろう。
 
それではタイラーの手口を振り返って検証していく。まず彼は街外れの――もしくは寂れた――酒場へ足を運ぶ。利用者の多く(すべてと言ってもいい)が下流、良くて中流だからだ。そうした利用者は、クラブに参加する資質を持っている可能性が非常に高い。すなわち社会に対する不満、上流階級に対するルサンチマンとも言うべきものである。そうした人間の行きかう場所でタイラーは「僕」とファイトを行い、興味を引き付ける。何度も繰り返していれば、憂さ晴らしにと参加する者が現れるのも不自然ではない。アルコールの助けもあればなおのことだ。ひとりでも参加すればこちらのもの、それがサクラの役割を果たして、あとは雪崩のように参加者が増えていく。なにせそこにいるのは誰もが、その憂さを慰める為に酒場に足を運んでいるのだから。きっかけはなんでも構わない。とにかく重要なのは、不満を抱えた人間に僅かな間でも輝ける場を与えてやるということだ。それも、タイラーの言葉を借りれば「大抵のやつらは避けたがる」ファイトという場を。これが計画の下準備だ。
 
 ここから本格的に計画に乗り出す。タイラーはファイトに相応しい場所を用意させる。それは薄暗く、狭い場所がいい。人目につかないからではない。それもあるかもしれないが、それ以上に、人の判断力を低下させるのが狙いである。そこで男達はファイトを繰り広げる。日常生活において味わうことは滅多にないであろう極度の興奮・緊張状態に加え、痛みを和らげようとの反応から、アドレナリンやエンドルフィンといった脳内物質が彼らを支配する。いわばひとつのトランス状態に陥るわけだ。そんな彼らにタイラーは言葉を投げかける。彼らのルサンチマンをくすぐる言葉を。ここでは丁寧な説明は不要だ。アフォリズムのような、印象に残る響きの強い言葉がいい。これで精神力の強い、我を持った人間でないかぎり(残念ながらそんな人間はこの場に存在しない)、深層心理に刻み込まれることだろう。すなわち「自分達は正しい生き方をしている。にも関わらず間違った生き方をしている者たちに虐げられている」と。彼らは内に押し殺していた不満を外へと向ける。そこに迷いは無い。彼らにとってそれは正義なのだから。カルトになぞらえて言えば洗脳の段階が終了したということだ。



『騒乱計画』の発動により、クラブの様相は変貌する。もはやただの「ボクシング・クラブ」ではなくなっていた。寝食をともにし、日中は石鹸の製造(でカムフラージュした爆薬の製造)を行い、日が沈めば闇夜に紛れてテロ活動を行う。タイラーの指揮下で動く彼らは、私設軍隊と呼ぶにふさわしい姿であった。

 変わったのはクラブのメンバーだけではない。タイラーにもまた同様に変化が表れる。「僕」を導いてきたその手をすっかり離してしまうのだ。誰より信頼していた友人だったはずのタイラーの半ば裏切るような態度に、「僕」は困惑と怒りを募らせる。そしてついにタイラーは計画の仕上げを行うために、「僕」の元から去ってゆく。それはまるで「僕」の父親が幼き「僕」を捨てたように。幼き「僕」に父を追う術はなかったが、今は違う。彼は半券を頼りにタイラーの足取りを追う。父親は各地に家庭をつくっていたが、タイラーは代わりにファイト・クラブをフランチャイズしていた。

 タイラーを追う先々で「僕」は衝撃的な事実を知る。タイラーとは他ならぬ自分であり、自分は他ならぬタイラーだったのだ。つまりタイラーは「僕」がつくりだした架空の人物であった。タイラーが「僕」とまったく同じ過去を持っていたのはどのためであり、クラブが出来る以前、「僕」とタイラーの殴り合いが目を引いたのは、それ自体の物珍しさではない。ひとりきりで「何か」と闘っている姿が目を引いたのだ。カルト教祖は信者を集める為に「奇跡」を披露するが、それに類するものと言える(ちなみに「僕」のように幼少時に精神的なストレスを受けている、あるいは充分な愛情を受けていないと、解離性同一性障害を発症しやすいと考えられている。「僕」の状態が解離性同一性障害であると断定はできないが、架空の人物を生み出すに適した環境であるのは確かだ)。
 タイラーが「僕」の生み出した存在であるならば、彼を生み出した理由こそが前章の答えとなるだろう。つまり『騒乱計画』の真の目的である。同一人物である以上、タイラーの行動理念の根幹は「僕」の中にあるはずだ。

 タイラーは言う。(「僕」は)生き方を変える為の先導を求めたのだと。「自由」な生き方を望んだのだと。「僕」にとっての自由とはなにか。それは父親との蟠りを解消することである。これは父親に謝ってもらって仲直りをしたいであるとか、そういうことではない。ここでいう父親は、彼の心の中で彼を縛り付けるイメージとしての父親である。彼の心に残った過去の父親と言ってもいいかもしれない。それはもうこの世に存在しない。だから彼は父親の象徴としての社会を破壊する。何故なら彼が父親から受け取ったのはものは、父親自信の教えではなく、社会の規範そのままだったからだ。そして父親は社会であると同時に偉大なる神でもある。作中にも「子供にとって父親は神だ」というセリフが登場する(社会学者デュルケムはこの3つの概念を繋ぐような「神とは社会である」という言葉を残している)。

 復讐をしたい。しかし神に逆らうことはできない。このジレンマがタイラーを生み出した。自分の力で不可能ならば、誰かの力を借りればいい。神を必要としない男の力を。神に「ザマーミロ!」を突きつけられる男の力を。だからタイラーは現代社会を嫌悪する。憎悪する。徹底的に破壊する。「僕」の財産(父親に従うことで手に入れたもの。彼の心の束縛を具現化したものとも言える。)を吹き飛ばすことに始まった彼の計画は、経済の中枢を司る金融機関をすべて爆破することで締めくくられる。文明をゼロに帰す、まさに神をも恐れぬ所業だ。そうなれば「僕」を呪縛するものは存在しない。『騒乱計画』の真も目的とはすなわち、「もうあなたに従って生きることはない」という、父親に対する完全な否定である。この計画はすべて「僕」とのためのものであり、タイラーが解消しようとしたのは貧富の格差ではなく、「僕」の父親へ対するしがらみだったわけである。先に復讐と書いたが、遅れてやってきた反抗期だと捉えてもいいだろう。これもま「僕」が父親から奪われたものである。なにせ反抗しようにも相手はいないのだから。

 以上が『騒乱計画』の全貌だが、その仕上げの目前に「僕」はタイラーと衝突する。タイラーの行動が「僕」の想像を超えていたから?違う、タイラーが「僕」の手を離した時から、既に確執が生まれていた。タイラーは或いは意識せずに「僕」に計画の邪魔をさせたのだ。「タイラー」として(つまり「僕」の自覚なくして)計画を遂行してしまっては意味がなくなってしまうからだ。ここからわかるようにタイラーには、『騒乱計画』とは別に役目が存在する。これを語るうえで外せない重要な人物、それがマーラだ。



今回はここまで
次回がラストです






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テーマ:洋画 - ジャンル:映画

  1. 2014/03/31(月) 20:59:34|
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